感染性結膜炎と麦粒腫・霰粒腫
CONJUNCTIVITIS感染性結膜炎とは
瞼の裏や白目の表面を覆う「結膜」に細菌、ウイルス、クラミジア等が感染して起きる炎症を感染性結膜炎と呼びます。結膜は眼球やまぶた裏側の表面に位置し、感染防御の最前線の役割を担っており、各種分泌物を内在した「涙」を分泌しやすいよう粘膜構造をしています。涙の中には、あらゆる外敵一般を攻撃する自然免疫系の物質や、過去の感染経験で作られた特定の外敵を攻撃する獲得免疫系の物質が含まれており、外敵を駆逐する重要な機能がありますが、単純に外敵を洗い流す役割もあり、この3つの機能で感染防御の砦となっております。
この防御砦が突破されて結膜炎(感染性)が発症します。
感染した結膜は外敵の種類によってある程度特徴的な炎症の様相を呈しますので、当院では病態に応じて投薬治療等させて頂いております。
細菌性結膜炎
細菌の種類によって差はありますが、血管怒張は強めで、白目全体がむくみます。めやには粘っこい場合が多いです。ブドウ球菌、肺炎球菌、連鎖球菌の他、重症な症状を呈する淋菌等が代表的です。推測される細菌に感受性が高い抗生点眼剤と炎症が強い場合は消炎系の点眼剤を併せて使用します。
ウイルス性結膜炎、クラミジア性結膜炎
これもウイルスの種類によって差はありますが、血管怒張は弱めの代わりブクブクした水膨れ(リンパ濾胞)の周囲を血管が細かく取り囲むような充血の様相を呈します。どちらかと言うと水っぽいサラサラしためやにが多量にでます。ブクブクした濾胞が接触するためゴロゴロとした異物感を感じ、耳の下のリンパ節が腫れて痛みを感じることがあります。
ヘルペスウイルスやクラミジアには対抗薬が存在しますが、他の大半のウイルスに対する特効薬は存在しないため、細菌性よりは治療に時間がかかる場合が多いです。疲弊した結膜に細菌が混合感染することを予防するための抗生物質点眼剤と炎症を抑えるためにステロイド系の点眼剤をします。強い炎症で角膜に炎症が及ぶ場合はヒアルロン酸製剤も併用します。ウイルス性は感染性が強いものが多く、特にクラスター等、学校や職場で問題となりやすいものについて追記します。
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流行性角結膜炎
一般に「はやり目」と呼ばれており、感染力は結膜炎の中で最強です。胃腸風邪等を起こし得るアデノウイルスのうち8・19・37型が原因となります。ウイルスが付着した手すり等を触れた手で目を擦ることによる接触感染が経路となり、1週間ほどの潜伏期間を経て発症します。白目全体がピンク色に腫れ、瞼結膜はブクブクし、角膜びらんで痛みを伴うこともあります。10~20日位と回復に時間がかかります。消炎が不十分ですと角膜に白い混濁を残して眩しさや見難さの原因になることもあるため、副作用のことも考慮しつつ適切な強度・期間の消炎点眼剤の使用が重要です。
法律上は、第三種伝染病に位置づけられ、医師が伝染可能性無いことを認めるまで登校・出勤停止とされています。 -
咽頭結膜熱
一般に「プール熱」と呼ばれており、アデノウイルスのうち3・7型が原因となります。1年中起こり得ますが、夏場にプールを介した飛沫・接触感染で広がり、下眼瞼結膜がブクブクになり咽頭炎も併発して熱発するためこの呼び名があります。塩素消毒が有効であるため、プールの塩素濃度を適正保つことで予防でき、名称とは裏腹にプールを媒介しない場合も多く見受けられる。感染から5~7日程の潜伏期間を経て発症し、回復には7~10日程かかります。
法律上は、第二種感染症に位置づけられ、主要症状消退後2日を経過するまで登校停止とされています。 -
急性出血性結膜炎
別名「アポロ病」と呼ばれており、エンテロウイルス70型かコクサッキーA24変異株が原因となります。アポロ11号が月面着陸した年に流行があったことが別名の由来ですが、最近の発症は他疾患と比べ少なめで白目が真っ赤になります。感染から1日程の潜伏期間を経て発症し、回復には7~8日程かかります。
法律上は、第三種感染症に位置づけられ、医師が伝染可能性無いことを認めるまで登校停止とされています。 -
クラミジア結膜炎
一般に「トラコーマ」と呼ばれており、クラミジアが原因ですが、日本での発症頻度は減少傾向にあります。
ウイルス性結膜炎のように白目全体がピンク色に腫れ、瞼結膜はブクブクし、角膜びらんを伴うことがあります。
代表的な性感染症で、感染から3~20日程の潜伏期間を経て発症し、回復には有効薬(抗生物質)を使用したうえで数カ月と長くかかります。
HORDEOLUM麦粒腫(ものもらい)について
眼瞼の先には黒目の表面に油層を形成して涙の蒸発を防ぐための脂腺(マイボーム腺、ツァイス腺)や汗腺(モル腺)が存在しますが、ここにブドウ球菌が感染して起こる炎症で、一般に「ものもらい」と呼ばれています。
まぶたが赤く腫れあがり、痛みを強く感じます。
感染から0~2日の潜伏期間を経て発症し、回復には抗生剤と抗炎症剤の点眼液や軟膏と抗生剤の内服を使用して3~7日程かかります。ただ、乳白色に腫脹した膿の塊が形成されている場合は切開して排膿することで消炎を早くします。
CHALAZION霰粒腫(めんぼ)について
眼瞼にある脂腺のうちマイボーム腺が何らかの炎症で詰まってできた腫瘤を霰粒腫(さんりゅうしゅ)と言い、尾張地方では「めんぼ」と呼ばれています。麦粒腫等の感染による炎症が原因でマイボーム腺の閉塞が発生することもありますが、これ自体は感染ではないため痛みは無いか消失しています。しこりは炎症の程度により大小変化しますが、大きくなって被膜が破れて細菌感染を引き起こした場合は赤く腫れあがり、痛みを感じます。
まずはステロイドの点眼剤や軟膏剤と必要に応じて抗生物質の点眼剤や軟膏剤を使用した消炎療法を行います。消炎が奏功し、外観等含めて問題ない場合はそのまま経過観察としますが、軽快しない場合や軽快しても再燃を繰り返す場合は手術加療適応となり得ます。
手術は、皮膚消毒し、局所麻酔薬を注射して10分程経過した後執刀します。表面側に大きな隆起がある場合は表面側を切開して被膜を含めた内容物を除去し、最後に縫合して1週間後抜糸します。眼瞼内側に限定的な隆起がある場合は、内側のみ部分切開し内容物及び被膜を除去します。
当院では、概ね以上の流れで施行しており、手術は眼瞼表面側15分程、内側5分程頂いております。
※似たような外観を呈するものに脂腺癌があり、特にご高齢でどんどん大きくなる場合は早めの鑑別を要します。