網膜硝子体手術の実際~黄斑円孔・裂孔原生網膜剥離・硝子体出血~
MACULAR HOLE黄斑円孔
その名の通り黄斑部の網膜に穴があく疾患です。あく直前の状態から部分的な開窓、完全な穴である状態まで程度は様々ですが、代表的な症状は視野中心部の欠損です。ただ、穴の形状から発生経過時間により視機能障害の程度は様々です。原因としては網膜前膜同様に加齢に伴う硝子体収縮であることが多く、本疾患の場合はそのけん引が構造上脆弱な黄斑部に穴を生じさせることで発現し日本人発症率は0.1%程です。
網膜前膜と比較して視機能障害は重いことが多く出来れば発症から2週間以内、遅くとも1カ月以内の手術加療が理想です。術後の視機能は、やはり術前OCT検査において網膜深部の一定層の障害の程度が大きく左右します。手術は20分~30分程の加療時間を想定しており、3ポート法施行の後、硝子体切除除去し、高精細鑷子にて牽引の原因となっている膜もしくは内境界膜(網膜最内層の膜)を丁寧に剥離除去し、空気を硝子体腔に充填します。
術後1時間程俯き安静を病室で行い、以後約3日間の可能な範囲のご自宅での俯き安静をお願いしております。
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BEFORE術前
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AFTER術後
RETINAL DETACHMENT網膜剥離
本疾患も特殊な場合を除いて、硝子体の退縮が原因で発生しますが、硝子体が網膜の特定部分をけん引するだけに留まらず、網膜を網膜色素上皮から離開させてしまった病態をさし、日本人の発症率は0.01%程です。代表的な症状は初期であれば比較的強度の飛蚊症(影が見える)・光視症(チカチカ光って見える)ですが、進行すると視野欠損を自覚します。構造上、網膜は最周辺部の構造が最も脆弱であり、そこに硝子体けん引孔が発生して発症します。穴が開いただけの状態は網膜裂孔であり、レーザー網膜光凝固術で鎮静化は可能ですが、網膜が離開してしまった場合は観血手術の適応となります。術後の視機能は、やはり術前OCT検査において黄斑網膜深部の一定層の障害の程度が大きく左右します。
事態は急を要し、網膜中心部(黄斑)が離開する前に手術加療することが理想です。観血手術は眼内から施行する網膜硝子体手術法と眼外から施行する網膜復位法(バックリング法)がございますが、障害のタイプや年齢に応じて選択致します。網膜硝子体手術を選択した場合、手術は30~60分程の加療時間を想定しており、3ポート法施行の後、硝子体切除除去し、網膜けん引が続いている場合には、その原因となっている膜を丁寧に除去し、空気を硝子体腔に充填し、網膜を復位した後、眼内レーザーにて網膜孔周囲の網膜を凝固し、最後に空気もしくは人工ガスの充填を行います。
術後1~2時間程俯き安静を病室で行い、以後約3~10日間(障害程度により期間は前後します)のご自宅での俯き安静をお願いしております。
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術前
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術5日後(ガス留置状態)
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術1カ月後
VITREOUS HEMORRHAGE硝子体出血
本疾患は様々な眼科疾患を原因として発生しますが、ここではその代表例である糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症についてご説明します。糖尿病、高脂血症、高血圧等の持続は全身の臓器において様々な血管障害を引き起こします。
糖尿病網膜症
前者、糖尿病網膜症は以下の3段階に分けられます。
- ① 網膜血管障害により血管から血液成分が漏れ出してくるだけの段階:単純糖尿病網膜症
- ② 網膜血管障害の進行により、血管が詰まってしまう段階:増殖前糖尿病網膜症
- ③ 漏出した血液成分が網膜をけん引する膜を形成し、既存血管の閉塞による酸素不足から新たに異常血管(新生血管)が発生し、脆弱な異常血管の破綻により硝子体に出血が及ぶ状態:増殖糖尿病網膜症
上記の中で①は内科加療を続け、眼科は経過観察となります。②は一般的にレーザー治療である網膜光凝固術の適応となります。③は網膜光凝固術での進行制御が困難な場合において網膜硝子体手術の適応となります。ただ、内科糖尿病管理が不良な状況下での網膜硝子体手術遂行は困難であるため、その場合は総合病院での御加療をお勧めしております。
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BEFORE術前
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AFTER術後
網膜静脈閉塞症
後者、網膜静脈閉塞症で晩期合併症として閉塞網膜周囲に発生した異常血管等から出血が発生し、硝子体全体に及んで経過観察しても消退困難な場合や、黄斑部に網膜前膜を生じる場合がございます。本障害による視機能障害が日常生活に支障をきたす場合が網膜硝子体手術の適応となります。
手術は30~60分程の加療時間を想定しており、3ポート法施行の後、硝子体切除除去し、網膜けん引が続いている場合には、その原因となっている膜を丁寧に除去します。網膜剥離が発生している場合は、空気を硝子体腔に充填し、網膜を復位した後、眼内レーザーにて網膜孔周囲の網膜を凝固し、最後に空気もしくは人工ガスの充填を行います。術後1~2時間程俯き安静を病室で行い、以後約3~10日間(障害程度により期間は前後します)のご自宅での俯き安静をお願いしております。